2018年診療報酬改定が迫っており不安な日々が続いているかと思います。調剤薬局に働く薬剤師として、今薬学生に知ってもらいたい内容をまとめてみました。
調剤薬局薬剤師の不安
2017年12月現在、私は中小規模の調剤薬局に勤めていますが、今後の薬局業界に対して不安を持っている薬剤師がほとんどです。
どのような不安かというと、
- 2018年度診療報酬改定でどう変わるんだろう?
- かかりつけ薬剤師をもっと取らないといけないのかな?
- 後発医薬品上がらないけどどうしよう?
- 地域活動はもっと厳しくなるのかな?
- 在宅医療にまだ取り組んだことないし、やりたくないな・・・
- ますます仕事の負担が増えそうだな
- 売上が大幅ダウンになったらどうしよう?
- 薬局潰れたり、M&Aされないだろうか?
さて、薬学生の皆さんは上に書いてある不安が具体的にどのようなことかご存知でしょうか?
大学では、診療報酬改定やその内容についてある程度は勉強するかと思います。
例えば、次の3つについてどのくらい理解しているでしょう?
- 診療報酬改定の方向性
- かかりつけ薬剤師とは何か
- 後発医薬品の目標値
これらをさらに掘り下げると、
- 診療報酬改定の財源はどうなっているのか
- かかりつけ薬剤師に何が求められているか
- 後発医薬品目標80%を達成したら次はどうなるのか?
といった疑問につながりますが、おおまかにでもわかりますかね?
おそらく大学では教えてくれないですよね?
私は、薬局業界の流れを就活前の薬学生に是非とも知ってほしいと思ってます。
なのでこれから3回に分けて、かなり厳しい見解を述べたいと思います。
- 第1回【薬学生向け】2018年度診療報酬改定前に今後の薬局業界を考えてみた
- 第2回【薬学生向け】調剤薬局業界は経営危機、2018年診療報酬改定でどうなる?
- 第3回【薬学生向け】生き残るのはドラッグストア!?、医療と黒字経営の観点から今何ができるか?
というのも、私が新卒のときは安易に就職先を決めてしまいました。
結果、何度か転職もしました。
後悔はないですが、もっとしっかり薬局業界について勉強していたら、さらに遡ると学生の時に真面目に勉強していたらなと今でも思います。
私の時代は、まだ転職しても給与や待遇UPの交渉ができたんですが、今後は間違いなく厳しくなります。
私と同じ失敗を繰り返さないよう、是非とも薬学生[できれば就活前]に読んでもらいたい現場のリアルな話をお伝えします。
調剤薬局業界の現状
これまで調剤薬局業界では薬剤師不足と言われてきました。
[2019年現在、都心部では過去形に近いと思います]
薬剤師不足の原因のひとつは、調剤薬局数が伸び続けていることにあります。
[厚生労働省より]
調剤薬局の数は伸び続け、2019年現在では約6万軒あるとされています。
なんとコンビニの数より多いんです。
しかし、この6万軒の調剤薬局は十分な働きを行っているのでしょうか?
実は、国は、調剤薬局の数を半分に減らすことを公言しています。
それは何故か?
2019年現在、調剤薬局薬剤師は報酬に見合った役割を果たせているのか疑問視されているのです。
調剤薬局業界の問題点
調剤薬局業界の一番の特徴であり問題点は、母体が民間企業ということです。
大手調剤薬局は株式上場しているため、株主への利益を最優先に考えなければなりません。
そのため、どうしても利益>医療となってしまう場合が多いのです。
一方で、病院やクリニックといった医療機関は、医療法人が多く、基本的には非営利的な経営が求められます。
医療法人は株式会社と異なり、税制面で大きな優遇を受けることができます。
そのため、非営利的な考えがほとんどとなり、医療>利益となるのです。
調剤薬局の報酬:高い利益率
調剤薬局業界は、他の業界と比較して利益率の高い業界です。
例えば、飲食業を考えてみましょう!
新しくお店をオープンする前には、新聞に折り込みチラシを入れたり、ポスティングをしたり、フリーペーパーにクーポンを載せたり、最近では食べログにお金を払って順位を上げてもらったりと、まずはお店を知ってもらうところから始めなければなりません。
広告、宣伝に費用が掛かるのです。
TVCMを見るとよくわかりますが、一度だけでは覚えてもらえないので集中的に宣伝したり、定期的に宣伝していますよね。
しかし、調剤薬局業はどうでしょうか?
これまでの調剤薬局業界は、ビジネスにおいて一番難しい”広告”をほとんど行わなくてよいため、一度軌道に乗ってしまえば安定して利益を出すことができるのです。
なぜなら、病院やクリニックの近くに薬局を開局すれば、勝手に患者さんが入ってきてくれるのです。
- いいドクターを見つけてきて、いい立地に調剤薬局を開局する。
- 調剤薬局内では、ドクターの処方箋に間違いがないかを確認し、正確に調剤したものを患者さんに渡す。
実は、この2つを気を付けるだけで、処方箋1枚につき2000-3000円の利益を得ることができます。
[2016年度調剤技術料の平均が2240円+薬価差益数百円で見積り]
つまり1日40人の患者さんが来れば、8万円-12万円/日の利益となります。
1ヶ月で20日間のみの営業でも、160万円-240万円/月の利益となり十分すぎる経営状態を維持できるのです。
このように、いい立地にミスの少ない薬剤師を配置するだけで、誰がやっても儲かるのが調剤薬局業界でした。
しかし、2016年度診療報酬改定の後、薬局全体の利益が7.4%減収となりました。
中でも1-5店舗程度の小規模の調剤薬局において経営が厳しくなっており、10-20%の減収となってます。
次回は、ここ数年で起こった調剤薬局業界の変化と、今後働く上で薬局薬剤師がどのように変わるのかについて私の意見を紹介します。